| | 左:駒田隼也さん近影(撮影:嶋田礼奈) 右:単行本書影 | |
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小説家・駒田隼也(こまだじゅんや)さんのデビュー作である『鳥の夢の場合』が第68回群像新人文学賞を受賞し、また、同作品が第173回芥川龍之介賞候補に選出されたことが発表されました。 |
京都芸術大学(京都市左京区、学長:佐藤卓)は、2017年(旧・京都造形芸術大学)文芸表現学科卒業生である駒田さんの快挙を心より祝福いたします。なお、同作品は講談社より2025年7月16日に単行本として刊行予定です。 |
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学校法人瓜生山学園が運営する京都芸術大学は、芸術全般にわたる多様な表現の学びを通じて、それぞれの分野で活躍する創作者の育成に取り組んでいます。駒田さんの今回の受賞とノミネートは、創作の現場に根ざした学びが社会と接続されていくことを示す象徴的な成果であり、大変意義深く受け止めております。駒田さんの今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。 |
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駒田さんから群像新人文学賞の受賞コメント |
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卒業制作では熱量だけで何とか評価されて、これくらいのもんが自分の4年間の成果かと首を傾げてもいましたが、何のことはなく、それはまだまったく助走の部分でした。卒業して8年経ちます。 |
8年、本当に経ったんでしょうか。あまりそんな気はしません。やり方はいろいろ工夫してきましたが、やっていること自体は変わらない。書くということが地続きにいまもあって、いざ書くときには大学生の気持ちがどこかにまだ重なっている。30歳になってそれはさすがにどうなん、身の振り方を改めて考えなおそうかというタイミングで、こうした新しいきっかけが訪れたことを、ここぞとばかり前向きに迎え入れようと思っています。 |
ここにいるのは制作や表現と名のつくものに引き寄せられて集まったひとたちなのだと、それだけで何か信頼があり、大学にはくつろいで居られました。そう言うわりに授業はさぼりもしましたが、教わったことは伏線が回収されていくみたいに、特にこの頃は、思い出すことがあります。こうして書いているからには、まだこれからも思い出せそうです。それがうれしい。 |
あのとき共に居合わせたその人たちとその場所に感謝します。ありがとうございました。 |
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駒田隼也(こまだじゅんや)プロフィール |
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1995年京都府生まれ。30歳。 |
2017年3月、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)文芸表現学科卒業。 |
卒業制作は小説作品「all about」(奨励賞)。現在は書店勤務のかたわら、京都新聞で「本屋と一冊」の書評連載も担当。 |
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駒田さんの担当教員・江南先生のコメント |
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「群像」といえば、戦後すぐに創刊された講談社でもっとも歴史ある純文学の文芸誌であり、新人賞受賞者として古くは村上春樹、村上龍、多和田葉子や阿部和重、そして乗代雄介など多くの人気作家たちを輩出してきました。このたび、そこに駒田くんの名が連なることは、彼の大学時代を知るゼミ担当の教員として、あるいは純文学の領域で文芸批評を書く書評家としても、この上ない喜びです。 |
アイデアに満ち、美しい世界を文章で立ち上げた受賞作の完成は、そう簡単なことではなかったはずです。文学の可能性を信じ、テーマを探求し、たゆまず技術を洗練させ、なにより表現するモチベーションを持続し続けた、彼の人生の本気がそこから伝わってきます。ここが、けわしくも光に満ちた小説家の道のスタート地点。今後、読者を瞠目させる作品をいくつも生み出していくだろう駒田くんを心から応援しています。 |
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江南亜美子(えなみあみこ)プロフィール |
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書評家、京都芸術大学准教授 |
おもに日本の純文学と翻訳文芸に関し、新聞、文芸誌、女性誌などの媒体で、数多くのレビューや評論を手がける。共著に『きっとあなたは、あの本が好き。』(立東舎)、『韓国文学を旅する60章』(明石書店)など。 |
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『鳥の夢の場合』冒頭抜粋 |
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目を閉じると何も見えなくなった。けど実際には目はまだ、まぶたの裏を見ている。見ることを止めるという機能が目にはない。まぶたの裏は、光がまったくないから見えることがない。だから見えない。けど見ている。 |
足を組んでいることを意識した。左足が右足にのっている、その重さが目を閉じると、きわ立った。視界にまわっていた、感覚の資源のようなものが目をあきらめて代わりの場所に集まりはじめ、それでいろいろなことが新たにわかった。 |
エアコンの風が頭のうえを流れていること。その風がすこしにおうこと。 |
すこしにおう と、言葉にして頭のなかで思っていること。 |
それからまぶた。まぶたを引っ張りおろす力が抜けていること。それでもなお、まぶたがおなじように閉じたままであること。 |
それで思い出す。そのつもりもないのに思い出していた。 |
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--まぶたは、閉じていくのが自然なんでしょうか。それともひらいていくのが自然なんでしょうか |
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群像について |
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「文学は面白い!」自由で新しい表現を追求し続ける講談社で最も歴史ある月刊文芸誌「群像」は第二次世界大戦終結の翌年、1946年10月に創刊した文芸誌であり、講談社で最も歴史のある雑誌です。いかなる傾向文学にも偏しない、常にひろき視野に立つ、という理念に基づいて作られました。 |
群像新人文学賞は、林京子、村上春樹、柄谷行人、村上龍、高橋源一郎、多和田葉子、阿部和重、島本理生、村田沙耶香、乗代雄介などの作家・評論家を輩出しています。 |
※ https://gunzou.kodansha.co.jp/about より引用 |
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京都芸術大学 |
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https://www.kyoto-art.ac.jp/ |
国内最大規模の芸術大学として通学課程、通信教育課程を合わせ、国内外から22,000名を超える多様な年齢層の意欲的な学生が集まる教育機関です。芸術を通して社会で必要な力を育成しています。芸術を学んだ学生が社会を変える「藝術立国」を教育目標に掲げ、通学課程では特に "社会と芸術"の関わりを重視した芸術教育を推進。企業や自治体などが抱える課題を、学生たちがアート・デザインの力で解決する「社会実装プロジェクト」が年間100件以上あります。学科を超えたグループワークや実際の仕事を通して、社会性を備えた表現者を育成しています。 住 所:〒606-8271 京都府京都市左京区北白川瓜生山町 2-116 |
学科編成:10 学科 24 コース(美術工芸学科、キャラクターデザイン学科、情報デザイン学科、プロダクトデザイン学科、空間演出デザイン学科、環境デザイン学科、映画学科、舞台芸術学科、 文芸表現学科、こども芸術学科) |
在籍者数:4,277 名(芸術学部 正科生、2025年5月現在) |
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